適応障害の診断を受け休職をし、現在カウンセリングと心療内科に通っている者です。
人生初のカウンセリング体験についてお話ししたいと思います。
個人の一例ですが、カウンセリングを検討している方の参考になれば嬉しいです。
5回のカウンセリング、それぞれの内容
カウンセラーに状況を説明する段階(1・2回目)
初めてでどうしたらよいかわからなかったので、カウンセラーにどうやって進めていけばいいのか聞いてみたところ、
「思ったことを、そのまま、何でも話してくれれば大丈夫ですよ」
ということでした。
それならばまずは自分の現状を知ってもらうのがいいかなと思い、説明することにしました。
なぜ心療内科を受診したのか、そしてカウンセリングを受けることにしたのか。
その経緯をひたすらしゃべりました。
・何があったか
・自分はそのときどう感じたか
・今、どんなことに悩んでいて、つらいのか
言葉にして説明するなかで、「自分はこんなことを思っていたんだ」と改めて気づくこともありました。
特に印象的だったのは、話していて自然と涙が出たときです。
受診のきっかけは仕事でのストレスでした。
でもそれ以上に、「もしこのまま自分がどんどん調子が悪くなっていって、家族に迷惑をかけたらどうしよう」というのが気がかりだったのだなと気づきました。
本当にただ話しているだけでしたが、これだけでも気持ちが少し軽くなったなと感じることができました。
心との向き合い方を学ぶ段階(3・4回目)
2回のカウンセリングでひととおり状況や気持ちの説明を終えたあと、どのように自分の感情と向き合っていくかを考える段階に移りました。
私は2つの課題を実際に行いました。
- 思ったこと書き留める
- 自動思考訓練
それぞれの内容について触れていきます。
【思ったことを書き留める】
3回目のカウンセリングで出た課題です。
落ち込む、悲しくなる、イライラするなど、心が不安定になったとき、どんなことを考えていたかをメモします。
私が書いていったメモの一部を紹介します。
仕事のことが気になってしまい、会社のホームページを調べたが、忙しそうだった。
今もし復帰したらどういう状況か考えてしまって①、イライラ②したり、落ち込んだり③した。
補足すると、私はコールセンター勤務で、その日の混雑状況などが会社のホームページで公開されています。
これを見て、忙しそうだと判断をしました。
このメモに対して、カウンセラーから、感情や思ったことをさらに掘り下げてみようと助言がありました。
具体的には、
- どういう状況か考えてしまって
考えたことは本当に正しいか?その根拠は? - イライラ
何を考えたときにイライラしたのか - 落ち込んだ
なぜ落ち込んだか、その理由は?
これを掘り下げていくことで、自分の考え方のクセや、マイルールに気が付きやすくなるとのことでした。
紙に書いてみることで、頭の中にある考えが可視化されて、どんなところを掘り下げていけばいいのかが明確になりました。
【自動思考訓練】
4回目のカウンセリングで出た課題です。
自動思考とは、何か出来事があったときに、意識せずに自然と湧き上がってくる考えのことだそうです。
例えば、誰かに挨拶をしたときに、相手が返事をしてくれなかったとします。
- 挨拶したのに返事をしないなんて、嫌なやつだ!
- わざと無視されたのかも…私のことが嫌いなのかな…
- 考え事をしていて、気付かなかったのかもしれない。気にしなくていいや。
人によって考えることは違うと思いますが、このように反射的に浮かんでくるのが自動思考です。
ポジティブな考えなら問題ありませんが、ネガティブな自動思考が多いと、生きづらく感じてしまうことがあります。
自動思考訓練とは、頭に良くないイメージが浮かんだ時の対処法です。
以下のような手順で、自分の感情を分析し、整理していきました。
- 状況
いつ、どこで、誰と、何をしていたか。 - 気分
元気な状態を100%とし、どれくらいの気持ちか。 - 自動思考
具体的にどんなことを考えていたか。思いついたままの言葉を書く。
きれいな言葉に直さなくてよい。字もきれいに書こうとしなくてよい。 - 根拠
自動思考を裏付ける根拠となることを挙げていく。
断定的に「~である」と言い切れる事実だけを書く。
「~と思われる」といった予測や推論はNG。 - 反証
自動思考とは矛盾する事実を考える。 - 適応思考
根拠と反証を「しかし」でつないでみる。最悪なシナリオ、最良のシナリオを考え、その中から「現実的なシナリオ」を探っていく。 - 今の気分
②から変化したかを振り返る。
自動思考訓練をやることで、どう考えたらもっと楽になれるかを探していくのです。
そのためには、いろいろな角度から状況を見つめる視点が必要になってきます。
- 自分が第三者だったとしたら、どんなアドバイスをするだろう
- 今までに似たような経験をしたことはないか、その時どうやって解決したか
- 相手の気持ちを決めつけていないか
これを考えるのがなかなか難しいのですが、私は「もし今自分が言っていることを、仲の良い友達が言っていたとしたらどう思うだろう」という観点から考えることにしました。
人に伝える言葉は、自分に投げかける言葉よりも、もっと寛容で優しいと思ったからです。
どうやるのが正しいとか、正解があるものではないので、自分がどうすれば納得できるかを考えながらやってみるのがいいのかなと思いました。
課題をやったうえでの気づき(5回目)
自動思考訓練をやってみて、そのときはとても気分がスッキリしました。
でも、しばらくするとまた疑問が湧いてきたのです。
「私が書いたことは、一般的に正しいことであって、心から思っていることではないな」
と感じるようになりました。
これではまるで、テストで100点をとるために課題をこなしているようだ、と。
せっかく教えてもらった自動思考訓練をやってみても、思ったような効果が出なくなっていきました。
5回目のカウンセリングでは、この気持ちを正直に話し、伝えました。
カウンセラーからの回答は、こんな感じです。
人の感情は、自動思考訓練をしたからといって、確定するものではないです。
残念ながら、一度やったらそれで解決というわけにはいかないのです。
あとから考えが変わってしまうことも、じゅうぶん考えられることだと思います。
苦しいとき、自分を楽にするための方法のひとつとして考えてみてください。
私は心のどこかで、
「訓練をやる=タスクを完了する」
と捉えてしまっていたのかもしれません。
その苦しい瞬間を和らげるための自動思考訓練だと受け止めたら、少し気が楽になりました。
もし今回納得する回答が得られなければ、カウンセリングは打ち切ろうかと思っていましたが、自分のためにももう少し通ってみようかと思います。

カウンセリングを受けて良かったところ
第三者に話す気軽さ
カウンセラーは良い意味で、「自分と距離のある人」だと感じました。
家族や友人など、親しい人に相談するとき、無意識のうちに言葉や話す内容にブレーキがかかることがあります。
「こんなことを言うと、おかしいと思われるかも」
「これを言うと心配させてしまうだろうから、言わないでおこう」
といったようなことです。
身近な人には、気を使って本音を話せないこともあると思います。
自分とプライベートな関わりのない第三者だからこそ、フラットに自分の感情を伝えられるというのが、カウンセリングの良さかなと思いました。
相手が専門家という安心感
考え方のクセ、認知の歪みにすばやく気づいてくれるのが、専門家に相談するメリットだと感じました。
一般の人であれば気づかない、または気づいたとしても深く追求しないであろうことを確認してくれます。
例えば、「自分のせいだと責めてしまうのには、なにかキッカケがありましたか?」といった感じです。
ひとつひとつを丁寧に確かめ、「そういえば、なんでだろう?」と立ち止まって考えることで、思考の根本的な原因を見つけるヒントになります。
自分を深堀りする手助けをしてもらえるのは、専門家ならではの良いところだと思います。
ただ聞いてもらえるだけでもいい
すべてを理解してもらったわけではないけれど、話を聞いてもらうだけでも楽になると感じました。
何か意見を言ったり、気持ちを伝えたとき、カウンセラーはそれをただ受け止めてくれます。
何もアドバイスをされないことに最初は不安を感じましたが、解決を急がなくてよいというメッセージなのかなと今では受け止めています。
自分の意見を否定も肯定もされないというのは、思っている以上に心地よい体験でした。
なぜ、「否定も肯定もされない」ことは心地よいのか
「否定はわかるけれども、なぜ肯定もされなくていいの?」
と、思うかもしれません。
個人的には、肯定も多少なりとも心に負担がかかるものだと思っています。
- 肯定されることで、自分の言葉に責任が生まれ、それがプレッシャーとなる
- 肯定もひとつの「評価」の結果であり、他人に左右される
- 肯定してもらえることを言わなければいけないと、無意識に考えてしまう
否定も肯定もされないということは、このような心理的不安から解放され、感情や思考の存在そのものを認めてもらっている感覚をもたらします。
この「存在の承認」こそが、深いレベルでの安心や心地よさの源になっているのだと思います。
さいごに
おそらくですが、私はかなりテンポ良くカウンセリングが進行しているほうなのではないかと感じています。
この例より、もっともっと時間が必要な人、課題をたくさんやっていく人も大勢いると思います。
カウンセリングはその人自身に合わせた、言わばオーダーメイドです。
何が正解で、何が間違っているということはないので、それぞれのペースで進んでいくものだと思っています。
「カウンセリングってこんなことをするんだな。こんなふうに進むんだな」
という参考になれば、それだけで嬉しいです。
これからカウンセリングを受ける方が、ご自身に合ったカウンセラーと出会い、心地よい時間を過ごせますように。
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