ついつい使ってしまう魔法のことば―。
『ヤバイ』
たった3文字でいろいろな感情を共有できるって、すごいことですよね。
でも、便利なあまり使いすぎてしまったり、「今のはなんのヤバイなんだ?」とわからなくなってしまうことってありませんか?
特に最近は、「ヤバイ」でばかり表現することが、悪いことのように言われることもあります。
はたして、なんでもかんでも「ヤバイ」で済ませてしまうのは、本当に「ヤバイ」ことなのでしょうか。
この記事では、「ヤバイ」の良いところも探しながら、もっと気持ちを伝えるための最適な方法を考えていきたいと思います。
こんなときに使われる「ヤバイ」
「ヤバイ」は非常に多くの解釈ができる言葉で、文脈・イントネーション・表情によって意味が変わります。
例えば、
「このケーキ、ヤバイ!」
→おいしい、絶品、最高(ポジティブ)
「テスト勉強全然してない、ヤバイ…」
→大変だ、まずい、どうしよう(ネガティブ)
といったかんじです。
良い意味のときでも悪い意味のときでも、会話に自然に溶け込んでいますし、意味も伝わりますよね。
特に会話のテンポが早い若い人同士だと、意思疎通がスムーズになります。
「ヤバイ」を使うことによって、コミュニケーションが効率化されているのです。
「やばい」の本来の意味は、危険や不都合な状況が予測されるさまを表す言葉です。
(小学館『デジタル大辞泉』より)
1990年代頃から、ポジティブな意味でも使われるようになりました。

「ヤバイ」って、けっこう前から良い意味でも使われてたんですね。
意外と知らない「ヤバイ」のメリット

では、ここで一度、「ヤバイ」のいいところを整理してみましょう。
- 仲間うちでの共通語になる
→同じ言葉を使うことで仲間意識が芽生え、一体感が生まれます。 - 感情を爆発させて、相手の心に直送できる
→感情を言葉に置き換える手間がないため、感じたことを即アウトプットできます。 - 今の時代にフィットした進化系ワード
→タイパ・コスパといった効率の良さが重視される時代に適した、言葉の進化だと考えられます。
こうした強みを知ると、なんとなく使っている言葉にも少し親しみがわいてきませんか?
「ヤバイ」を使うだけでちょっと仲良くなれたり、強い気持ちを一気に吐き出せたり…
便利な側面があるからこそ、これだけ多くの人が使っているのではないでしょうか。
それをただ「良くないもの」で片づけてしまうのは、なんだかもったいない気もしますよね。

結局はバランスってことなんですよね。
ではここからは、語彙が多いとどんなメリットがあるかを考えていきます。
語彙が増えることのメリット
感情をより繊細に伝えられる
例えば、「うれしい」という気持ちひとつとっても、
など、それぞれニュアンスが少しずつ異なります。
「ヤバイ」のひとことだけでは、この繊細な違いは伝えきれないですよね。
言葉の選択肢が増えることで、よりハッキリと感情のグラデーションを表現できるようになります。
自分の感情を正確に、深く言い表せることは、人との心の距離を縮めることにもつながります。
考える力の土台になる
言葉は思ったことを伝えるための、ただの道具ではありません。
物事を整理したり、考えたりするための「頭の中の操作ツール」でもあります。
たとえば、「なんかモヤモヤする」だけでは、気持ちの正体はよくわかりません。
でもこのときに、
焦り・不安・孤独・悔しさ
といった言葉を使えば、「モヤモヤ」を細かく分解して、整理することができるようになります。
つまり、語彙が豊かであればあるほど、複雑な思考や感情を正確にとらえ、言語化し、人に伝える力が育つのです。
逆に、語彙が乏しいと、
といった状態に陥りやすくなります。
「考える力」は、「言葉にする力(=言語化力)」に大きく支えられているのです。
TPOに合わせた表現は信頼につながる
TPOとは、
- Time(時)
- Place(場所)
- Occasion(場面)
の略語です。
ビジネスやパーティーのシーンにドレスコードがあるように、言葉にもその場にふさわしい表現があります。
日常会話なら「ヤバイ」で済ませていいことも、フォーマルな場や仕事のプレゼンなどでは、そうはいきません。
こういった「お堅い場面」では、言葉のバリエーションがどれだけあるかが問われます。
語彙力はいきなり身につけられるものではないため、適切な言葉を選べるというのは、教養や知性の表れともいえます。
文脈や場面に応じた表現ができることは、信頼や説得力にも直結するのです。
誤解や行き違いを防ぐ
「ヤバイ」は便利な一方で、解釈の幅が広すぎて誤解を生む可能性もあります。
例えば、こんなLINEが送られてきたとします。

文章だけのやりとりだと、相手の表情や声のトーンといったヒントがないため、言葉から読み取れる情報が少なくなります。
カフェが一体どうヤバかったのか、これではわからないですよね。
良いことなのか、悪いことなのかすらも判断できないです。
○ポジティブ | ×ネガティブ | |
---|---|---|
料理 | おいしかった | まずかった |
内装 | オシャレだった | 清潔感がなかった |
店員 | 親切だった | 態度が悪かった |
料金 | 安かった | 高かった |
少し考えただけでも、これだけのことが思いつきました。

送られた方としては、ちょっと困っちゃう…かな。
では、こんなLINEだったらどうでしょう?

何を伝えたいのか、かなり具体的になりましたよね。
語彙を豊かに使えば、言いたいことがより正確に伝わるようになり、コミュニケーションの行き違いを減らすことができるのです。
今日から使える「ヤバイ」の言い換え例:5選
ついつい使ってしまう「ヤバイ」ですが、たとえばどんなふうに言い換えることができるのか、具体例をいくつか紹介します。
うまい!めちゃくちゃ美味しい系

例)「このラーメン、ヤバイ!」
「衝撃的にうまい」
「こんなの初めて食べたレベル…」
「しみる…ほんとにしみる…」
感動や驚きを伝えるフレーズを加えると、共感を呼びやすくなります。
ピンチ!追い詰められた状況系
例)「ヤバイ、宿題やってない!」
「終わったかもしれない…」
「完全に詰んだ」
「危機的状況です」
「共感+笑い」を誘うような表現を加えると、重くなりにくいです。
アメージング!すごすぎて語彙が消える系
例)「あの演技、ヤバすぎ…」
「鳥肌立った」
「圧倒された…」
「ただただ、すごいとしか言えない」
素直な感動に「身体的なリアクション」「言葉を失う感覚」を加えると伝わりやすいです。
かっこいい!尊すぎる系
例)「今の笑った顔、ヤバイ!」
「惚れた…」
「太陽よりまぶしい」
「尊いってこういうこと」
テンションの高さやミーハー感を出しつつ、表現にバリエーションを加えると面白いです。
感動…!心が動かされた系
例)「あのスピーチ、ヤバかった…」
「胸に刺さった」
「思わず涙出た」
「心が震えた」
静かな感動は、あえてシンプルな言葉で表現するのが効果的です。
まとめ
「ヤバイ」は、私たちにとって便利で、感情を一気に伝えるパワーのある言葉です。
たしかに「表現力が下がる」といった声もありますが、だからといってすべて否定してしまうのはもったいないと感じます。
言葉にしづらい気持ちを、あえて一語で言い切るための、立派な選択肢のひとつです。
大切なのは、「ヤバイ」に頼りきるのではなく、その便利さを理解しながら、ほかの言葉にも目を向けていくことなのではないでしょうか。
ヤバイの良さも、限界も知ったうえで、少しずつ語彙を磨いていく。
そのバランスが、心を適切に表現するためには、きっと必要なのだと思います。
もっと語彙を増やしたいと思った方には、こちらの記事がオススメです。語彙力をアップさせるための、具体的なトレーニング方法が書いてあります。
コメント