やる気が出ないときの対処法を検索すると、だいたい出てくるこのひとこと。
「行動することでやる気が出る!!」
いやいや…そう言われても、最初の一歩がいちばん難しいんですよ…
とりあえず5分だけ…で、行動できるなら苦労しませんよね。
では、自然とやる気が出るのを待つしかないのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません!やる気は自分である程度操作できます!
ポイントは、「やる気が出る環境を設計すること」です。
①集中しやすい環境づくりをする
やる気が出ない理由のひとつに、環境が原因で気が散ってしまうことが挙げられます。
集中しやすい環境をつくるためには、主に以下の2つの側面から考える必要があります。
- 作業する空間を快適にする(体感的な要因)
例)部屋の温度・湿度の管理、着慣れている服を着る、リラックスできる香りを用意する、好きなBGMを流す・または無音にする - 興味をひくものを排除する(精神的な要因)
例)スマホを見ない、デスクの上を片づける
なかでも、特に気を付けなければいけないのが「スマホ」です。
SNSやゲーム・ショッピングなど、スマホには魅力的なありとあらゆる機能が搭載されています。
作業を始める前に、10分だけSNSチェック…のはずが、気がついたら1時間経っていた!
…なんていう経験も珍しくないのではないでしょうか。

筆者はしょっちゅうやってます…
スマホの誘惑に抗うのは本当に大変です。
こればっかりは意思の力でどうにかするのは難しいので、物理的に引き離してしまうのが有効です。
電源を切ったり、別の部屋に置いたりすることで、後に引けない環境を作ってしまいましょう。
②作業を始めるためのトリガーを作る
トリガーとは、一般的には「銃の引き金」のことを表しますよね。
ですがここでいうトリガーは、「出来事を引き起こすきっかけ」という意味です。
つまり、作業に入るためのきっかけを作ってしまおう、ということです。
- コーヒーを淹れたら作業を始める
- 作業開始時にいつも同じ曲を流す
- 作業前に大きく伸びをする など
特定の行動とセットにして作業をすることで、「トリガー行動=作業開始」と、脳に覚えこませます。
このとき、精神的負荷の大きい行動をトリガーにしてしまうと、「そもそもトリガーとなる行動をするのが億劫」ということになってしまいます。
例)筋トレをしたら作業を始める
筋トレ自体が面倒になって行動しなくなる可能性大です。
トリガー行動は思い立ったらすぐにできるものや、日常の中ですでに当たり前に行っていることなどにしておくとよいでしょう。
即効性はないですが、定着すると条件反射的にやる気モードに入りやすくなります。
③中地半端なところでやめる
人間には、まだ終わっていないこと(=未完了のタスク)のほうが、すでに終わっていることよりも強く印象に残るという性質があります。
これは、ツァイガルニク効果と呼ばれる心理現象です。
たとえば、集中して作業をしている途中で、他のことをしなければならなくなったとき。
中断している作業のことを頭の片隅で考えてしまう、という経験はありませんか。
この「キリの悪いタイミングで作業をやめる」というのを、意図的に取り入れるのです。
- 勉強で問題を解いているなら、全部の問題を解ききる前にやめる
- 資料作りやメールなど、文章を書いているなら、文の途中まで書いてやめる
中途半端なところでやめると、なんだかムズムズしますよね。
キリの良いところまで終わらせたくなってきませんか。
スッキリしない気持ちを解消するために、作業の続きがしたい―。
このような心理状態を作り出すことで、自然とやる気が湧いてきます。
④記録を「デイリーミッション」化する
スマートフォンのゲーム、いわゆる「ソシャゲ」をやったことがある方なら、「デイリーミッション」という言葉になじみがあると思います。
デイリーミッションとは、毎日簡単に達成できるゲーム内の小さな目標のことです。
よくある構造として、ミッションの累計達成日数が記録されていたり、連続達成することでより大きな報酬が得られるようになっています。
これらはどれも、行動を習慣化する仕組みとして用意されているものです。
そしてこの仕組みは、ゲームだけでなく、現実世界でも応用ができます。
連続達成を崩したくないという心理を利用するのです。
- カレンダーにチェックを入れる
- 日記アプリで毎日ひとことコメントを書く
このように実績を「見える化」し、記録を残していくことで、自分自身の「続けたい!」という欲求を引き出すのです。
それでもモチベーションが上がらなければ、「10日連続で達成できたら、コンビニでおやつを1個買ってもいい」などの報酬を用意するのもアリだと思います。

⑤「なぜやるのか」を明確にする
「なぜやるのか」を明確にするとやる気が引き出されるのには、3つの理由があります。
- 自己決定理論
- 脳科学的な根拠
- 意志力の節約
1.自己決定理論
自己決定理論とは、心理学者エドワード・デシ氏とリチャード・ライアン氏により提唱された理論です。
内容としては、
人は自分の意思で選んだことに対し、より強いモチベーション(やる気)を感じる
というものです。
自分の行動に「なぜやるのか」という意味づけをすることで、それが「自分で選んだことである」という認識が強まります。
結果として、それが自発的なやる気につながるのです。
2.脳科学的な根拠
人間の脳には報酬回路というネットワークがあり、「意味のある行動」に報酬を与えるしくみを持っています。
この報酬回路は、以下のように機能しています。
- 「やる理由(目的)」を脳が認識する
→ たとえば「この勉強は夢を叶えるためのもの」と思ったとき - 脳が「価値ある行動」と判断する
→ 無意味な作業ではなく、「未来につながる」と理解する - ドーパミンが放出される
→ モチベーションが高まり、「行動したい」という衝動が生まれる
ドーパミンは幸福感に作用する神経伝達物質で、結果に対してよりも「期待」や「意味」に反応して放出されやすい性質があります。
そのため、「これは〇〇につながる意味のある行動だ」と自分で認識することが重要なのです。
3.意志力の節約
「なぜやるのか」がはっきりしていると、選択や迷いが減り、決定に費やす労力(=意志力)を節約できます。
決断の負荷が減ることで、脳が「とにかく始める」ためのエネルギーを確保しやすくなるのです。
「なぜやるのか」が明確になったら、どうすればいい?
自分がその行動をする理由や、ゴールをひとことで書き出してみましょう。
例えば、こんなかんじです。

これはかなり大きな目標ですが、もっと身近なことを目標にしてもいいと思います。
「ペン字を学んで自分に自信をつけたい」
「毎日キチンと掃除をして、心が落ち着く空間で過ごしたい」など。
書き出したものを、いつでも目に入るところに貼っておくのも効果的です(この画像は巻物ですが…)。
ゴールを明確に提示することで、努力をした先に何が待っているかを想像しやすくなり、やる気が高まります。
まとめ
やる気を出すには「仕組みを作る」ことが大事
「行動することでやる気が出る」というのはまさしくそのとおりで、脳科学的にも裏付けのある事実です。
でも、「とりあえず行動する」って、口で言うほど簡単じゃないですよね。
自分でやる気をコントロールするためには、事前準備を行ったり、人間の特性をうまく利用する必要があります。
大切なのは強い意志や折れない心ではなく、人間の心の弱さを受け入れたうえで、やる気の出る環境を設計することなのです。
自分に合った方法をみつけよう
筆者は記事を書くとき、こんなことをします。
あらかじめ決めていたわけではなく、毎回自然にとっていた行動です。
今ではやる気がないときでも、これをやることで、「これから頑張るぞ!」というスイッチが入るようになりました。
どんなやり方が効果的かは、人によって様々です。
気になる方法をいくつか掛け合わせてみてもいいと思います。
「ちょっとやってみようかな」くらいの軽いスタートでいいので、もし興味のあるものが見つかったらぜひ試してみてくださいね!
中野信子『あなたの脳のしつけ方』青春出版社,2015年
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